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Project Story プロジェクトストーリー
Project
環境ソリューション
キャリアステップ
事業分野・職種
Phase 01

首都クアラルンプールの北200キロ、マレーシア第3の都市イポー。入社4年目の西本薫を乗せた車は、郊外の現場に向かって走っている。急に空が真っ黒になり、大粒の雨が叩き付ける。毎日のように工事を一時中断させるやっかいなスコールだが、このムシムシした気候が大きなヤシの木を生い茂らせている。世界で最も多く生産・消費されている食用油はヤシから精製するパーム油で、マレーシアは世界2位の生産国である。製油の際に出る絞りかす〈空果房〉はパーム油と同量で、年間約1900万トンに及ぶ「ごみ」を生み出している。野ざらしで廃棄するとメタンガスが、焼却処分するとばい煙が発生してしまう。どちらもここではよく見る光景だ。現地の人たちは最初、西本らをどう思ったことだろう。「いわば世界第2位のごみを引き取り、現地加工したあと、自国へ運搬しごみ処理施設のコークス代替として使う」。そんな奇想天外なプランを持って、わざわざ日本からやってきたのだから。

Phase 02

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西本が向かったのは空果房からコークス代替品をつくる、生産工場の建設現場。パーム製油工場が至近にあり、原料である空果房の入手に優位という理由でここに選んでいる。現地のコンサルからサポートをあおいで役所との折衝を何度も重ね、工場建設の準備も並行して進めてきた。工事監督には経験豊富なマレー人を起用し、資材の9割を現地調達とした。機械類の製作会社へも自らが足を運ぶことで、担当者だけでなく幹部らとも関係をつくると同時に、相手の工場の様子を見て、相互理解を深めていった。植物由来のバイオ燃料は、〈カーボンニュートラル〉と定義付けられている。原料の植物が成長するときにCO2を吸収→バイオ燃料を燃やすと吸収分のCO2は放出→そのCO2は次の植物に吸収され……という循環が成立するからだ。これを石炭コークスの代替にできればCO2削減に寄与できる。また絞りかすの空果房は食糧問題とも無関係である。廃棄や焼却による処分を減らすことができるため、現地の自然環境保護にもつながることは言うまでもない。

Phase 03

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〈商用レベルでのバイオマスコークス生産〉は世界初の試みである。試作を新鮮な状態の原料で行うため、西本ら開発陣は現地造成地の一角に小規模プラントをつくり、約4か月をかけて実証試験を実施。そのデータをもとにプロセスの見直しを重ね、工場の詳細設計をしてきた。まずは年産3300トンのパイロット事業としてスタートし、将来的に1万トン体制に持っていけるよう、技術の確立を目指していく。このプロジェクトにおける最大の特徴は、海外で建設した工場を自らの手で操業・運営するということ。生産されたバイオマスコークスを日本まで輸送し、かつて自分たちが建設したごみ溶融施設のコークス代替にする。マレーシアと日本を結び、お互いの環境問題に貢献するプロジェクトなのである。この現地会社の名称は「NIPPON STEEL & SUMIKIN BIOMASSCOKE (M) SDN.BHD.」。現地工場に携わる社員約40名とともに「マレーシアの抱える問題を絞り出し、知恵を絞り出して解決策をつくりたい」と、西本は未来を見つめた。